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【開催レポート】JSTi×JATO×ATA共催ウェビナー「世界に選ばれる観光地づくりへ ~インバウンド時代のデスティネーション戦略とは~」

2026年2月17日、一般社団法人日本アドベンチャーツーリズム協議会(JATO)は、(一社)日本サステナブルツーリズムイニシアチブ(JSTi)、およびアドベンチャーツーリズム・アカデミー(ATA)との共催でウェビナーを開催いたしました。


インバウンドの「数」が戻る今、観光地が向き合うべきは一過性のブームではなく、持続可能な「質」の向上です。本ウェビナーでは、第一線の専門家たちが一堂に会し、地域が主体となって世界から選ばれ続けるための具体的な戦略を語り合いました。



📍 基調講演:「世界のツーリズムの潮流と自然資源活用の可能性」
講師:山下 真輝 氏(JATO チーフディレクター)
基調講演では、山下氏より世界的な観光トレンドの変化と、日本の地域がとるべき戦略的転換について、詳細なデータに基づいた提言がなされました。


1.8億人時代の到来と、Z世代・ミレニアル世代が牽引する新たな価値観
UN Tourismの予測によると、世界の海外旅行者数は2030年に18億人に達します。この巨大な市場をリードするのは、サステナビリティへの意識が高いZ世代やミレニアル世代です。彼らの間では、オーバーツーリズムに陥った著名な目的地を避け、その代替となる隠れた名所を探す「デスティネーション・デュープス(目的地コピー)」や、目的地への道中で寄り道を楽しむ「デ・ツアー(寄り道旅行)」といったスタイルが主流になりつつあります。旅行者は今、単なる消費ではない「自分を成長させる本質的な体験」を切望しています。


「プロモーション(誘客)」から「マネジメント(経営)」への歴史的転換
これまでの日本の観光政策は「いかに多くの人を呼ぶか」というプロモーションに偏重してきました。しかし山下氏は、これからは地域側が主体的にルールを作り、来訪者の流れや環境負荷をコントロールする「マネジメント」への転換が不可欠であると説きました。観光客の増加がコスト(環境負荷や住民の不満)を上回らないよう、地域が責任を持ってハンドリングする「デスティネーション・マネジメント」こそが、これからの地域の生き残り戦略となります。

地域の自立を支える「独自のエンジン(自主財源)」と「回せる設計」
持続可能な地域づくりの最大の課題は、環境保全やインフラ維持のための「継続的な財源」です。山下氏は、補助金や行政の一般会計に頼るのではなく、宿泊税、入域料、協力金といった「受益者負担に基づく自主財源」を地域自ら確立することの重要性を強調しました。 観光収益を自然保護や地域住民の利便性に直接再投資する「回せる設計(エコシステム)」を構築すること。この独自のエンジンを持つことで、地域は初めて外部環境に左右されない「自立したデスティネーション」になれると締めくくりました。

📍 パネルディスカッション:「地域と共生するサステナブルの実践と課題解決」
後半のパネルディスカッションでは、モデレーターの山下氏による進行のもと、現場の最前線を知るパネリストたちが、具体的な3つの論点について本音の議論を展開しました。

【論点1】世界基準(Global Standards)とは何か?

「自然を『守る』から『元に戻す(リワイルディング)』へ、次元を引き上げる必要があります」(芹澤氏)
「チリ・パタゴニア国立公園の誕生の事例にみるように、自然を単に守るだけでなく、人間の活動で失われた自然を再生させる『リワイルディング』が評価の基準です。次世代の旅行者は、地域がそこまでコミットしているかをシビアに見ることになるでしょう。日本も『過剰なおもてなし』を脱し、自然と人間が50:50で向き合う哲学を持つべきではないでしょうか」

「高付加価値化とは『コンテンツ』を作ることではなく、地域の文脈を編むことです」(後藤氏)
「単に価格を上げることが目的ではありません。地域の自然や文化をどう編み直し、一貫したストーリー(文脈)を持つ『旅』として提示できるか。それが世界の旅行者が求めている価値です。保全と活用のバランスを保つことは、もはや特別なことではなく、世界の共通言語であることを忘れてはなりません」

「サステナブルをゲストとホストの『共通言語』にしていく努力が求められています」(藤稿氏)
「国際基準への適応はあくまでホスト側の責任ですが、それだけでは片手落ちです。国内旅行者を含めた利用者(ゲスト)側の意識をどう変えていくか。双方がサステナビリティを価値として共有し、同じ目線で地域の資源を大切にする文化を育むことが、真の意味での世界基準です」

【論点2】「消費されない観光」をどう実現するか?
「ガイドは案内役ではなく、地域の持続性をコントロールする『プロデューサー』です」(後藤氏)
「ガイドは地域の資源を守る『門番』であるべきです。例えば一次産業に負担をかけないよう、あえて受け入れを制限し、その価値をプレミアムに保つ。LNT(Leave
 No Trace)などの世界基準の自然行動倫理を活用し、来訪者とともに自然を守り、未来へ継承する。こうした地域のプロデューサーとしての役割が、観光地が『消費』されるのを防ぐ砦になります」


「管理・財源・インタープリテーションの『3本柱』を仕組みとして実装すべきです」(藤稿氏)
「『消費されない観光』を支えるのは、ルールによる適切な『管理』、保全コストを賄う『受益者負担』、そして価値を正しく伝える『インタープリテーション(ガイド)』の3つです。これを個人の熱意や善意に頼るのではなく、地域全体の『仕組み』として動かしていくことが不可欠です」


「価格の裏側にある『コスト構造と哲学』を可視化し、共感を生むことが重要です」(芹澤氏)
「なぜこのツアーがこの価格なのか。そこには環境保全への貢献や、ガイドの高度なトレーニングや人材育成の費用が含まれています。そのコスト構造を『地域としての哲学』として透明化し、旅行者に伝える。そうすることで、価格への納得感だけでなく、地域への深い敬意と共感が生まれるのです」

【論点3】政策と現場のギャップを埋めるには?
「行政の縦割りを打破し、全方位での『環境教育』を推進すべきです」(藤稿氏)
「観光庁と環境省の壁を越え、双方が知識を共有し合う場が必要です。観光の現場に保全の知識を、保全の現場に観光の視点を。地域に関わるあらゆるステークホルダーが『守りながら活かす』術を学び、ゲストも巻き込んだ教育体制を構築することが、資源の持続可能性に直結します」

「単年度の『商品造成』ではなく、5年スパンの『人材育成』へシフトすべきです」(芹澤氏)
「単年度の補助金で商品を作って終わりでは、地域を牽引する人材は育ちません。地域に根ざしたリーダーやプロデューサーを育成するには、最低でも3〜5年というスパンで、腰を据えて伴走し続ける中長期的な支援体制への転換を強く提言します。また、公募事業で造成されたツアーや商品がどう市場に提供されているのかが不透明で、実際に活用されているという現状や実績は聞こえてきません」

📍 共創する未来へ:JATOからのメッセージ
本ウェビナーを通じて、世界から選ばれる観光地になるためには、自然や文化の「保存」と「利活用」の好循環を生み出す、地域主体の覚悟と仕組みが必要であることが再確認されました。
JATOは、持続可能な地域づくりを目指す皆様とともに歩み続けます。その一環として、地域の未来を担う人材を中長期的に育成する「アドベンチャーツーリズム・アカデミー(ATA)第4期」を2026年9月に開講いたします。詳細は当Webサイトにて順次ご案内いたしますので、ぜひご期待ください。

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