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【コラム】私たちが「アドベンチャーツーリズム」に取り組む理由

JATOチーフディレクター山下真輝のコラムをお届けします。

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2025年、訪日外国人旅行者数は4,000万人に達することが視野に入り、2030年に政府が掲げる6,000万人という目標も、現実味を帯びてきました。インバウンド市場は量・消費額ともに拡大を続け、日本の観光は新たな成長局面を迎えています。一方で、特定の都市や観光地への集中によって、オーバーツーリズムが一部地域で顕在化しているのも事実です。こうした課題を背景に、国は地方への分散や周遊促進を重要な政策課題と位置づけ、受入環境整備や新たな観光コンテンツの創出を進めています。

このような流れの中で、近年注目を集めているのが「アドベンチャートラベル」です。自然、文化体験、アクティビティを組み合わせた旅は、長期滞在や高い消費額が期待でき、地方誘客との親和性も高い分野として評価されています。実際、日本政府観光局(JNTO)をはじめとする行政機関は、アドベンチャートラベルを重要なテーマの一つとして位置づけ、海外市場に向けた情報発信や商談機会の創出に取り組んでいます。旅行商品を造成し、市場に届けるという観点から見れば、こうした取り組みは合理的であり、日本の魅力を世界に伝えるうえで大きな役割を果たしています。

しかし、私たち(一社)日本アドベンチャーツーリズム協議会が向き合っているのは、「旅の売り方」そのものだけではありません。私たちが目指しているのは、世界中の旅行者が求めるアドベンチャートラベルを、安全に、質高く、そして継続的に受け入れることができるデスティネーションづくりです。言い換えれば、個々の旅行商品を増やすことではなく、「旅を受け入れ続けられる力」を地域に備えることこそが、私たちの役割だと考えています。

観光分野では、エコツーリズム、アドベンチャーツーリズム、サステナブルツーリズムなど、さまざまな「〇〇ツーリズム」という言葉が使われていますが、これらは互いに競合する概念ではありません。それぞれが役割の異なる観光施策です。エコツーリズムは、自然や文化を守りながら活用するための「保護と適正利用」の仕組みであり、地域資源を未来へ引き継ぐための基盤となります。アドベンチャーツーリズムは、旅の質を高め、地域の価値を体験として引き出す「価値創出」の仕組みです。そしてサステナブルツーリズムは、観光地全体を持続可能に運営していくための「マネジメント」の仕組みです。具体的には、DMOや地域事業者と連携しながら、ガイド・コーディネーターの育成、フィールド・ルートの整備、安全管理や受入体制づくりといった“地域の実装”を積み重ねていくことが重要になります。私たちは、これらを個別に捉えるのではなく、統合的に取り組むことでこそ、世界に選ばれるデスティネーションの形成につながると考えています。

とりわけ、アドベンチャーツーリズムに取り組む前提として重要なのが、エコツーリズムの視点です。アドベンチャーツーリズムは、自然や文化を消費する観光ではありません。地域の自然環境や文化を守りながら、適正に活用するためのルールづくりや合意形成、ガイドの役割、教育や啓発といった「守るための仕組み」があってはじめて、体験の質を高めることができます。保全と適正利用を土台とする考え方は、アドベンチャーツーリズムの出発点です。

さらに、デスティネーションを一過性の成功で終わらせないためには、サステナブルツーリズムとしてのマネジメントが欠かせません。魅力的な体験をつくるだけでは、自然環境への負荷、地域住民の理解、担い手不足、収益の地域内循環といった課題は解決しません。環境・文化・経済のバランスを意識しながら、観光地全体を評価し、関係者のガバナンスを強化し、改善を続けていく――こうした運営の仕組みがあってこそ、地域は持続可能な観光地として成長していきます。

私たちが「アドベンチャーツーリズム」にこだわる理由は、ここにあります。エコツーリズムの視点で地域資源を守り、アドベンチャーによって体験価値を高め、サステナブルツーリズムとしてデスティネーションをマネジメントする。この統合によって、アドベンチャートラベルを受け入れ続けられる地域の仕組みをつくること――それこそが、これからの時代に求められる観光のあり方だと私たちは考えています。

訪日外国人旅行者数がさらに増加していくこれからの日本において、問われるのは「どれだけ多くの人を呼び込むか」だけではありません。地域が誇る自然や文化を守りながら、旅の質を高め、その価値を次の世代へとつないでいくこと。私たちは、旅をつくるのではなく、旅が育ち、受け入れ続けられる地域をつくるために、これからもアドベンチャーツーリズムに取り組み続けていきます。

【図】「アドベンチャートラベル」と「アドベンチャーツーリズム」の違い

(一般社団法人日本アドベンチャーツーリズム協議会作成)

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