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【開催レポート】JES×JATO×JSTi共催ウェビナー「ET×AT×STで地域はどう変わるのか」①

エコツーリズム、アドベンチャーツーリズム、サステナブルツーリズムを地域づくりに活かす

2026年6月23日、日本エコツーリズム協会、日本アドベンチャーツーリズム協議会、日本サステナブルツーリズムイニシアティブの3団体共催により、「ET×AT×STで地域はどう変わるのか」をテーマとしたウェビナーを開催し、150名強の参加者が集まりました。
本ウェビナーでは、エコツーリズム(ET)、アドベンチャーツーリズム(AT)、サステナブルツーリズム(ST)を横断的に捉え、地域資源の保全・活用と持続可能な観光地域づくりのあり方について議論しました。
当日は先ずは、北海道弟子屈町、山形県出羽三山地域、京都府南丹市美山町の3地域から実践事例を紹介いただくとともに、その後、地域住民の巻き込み、観光資源の保全、世界に選ばれるデスティネーションづくりをテーマにパネルディスカッションを行いました。

📍持続可能な観光の実践に向けて
冒頭、日本エコツーリズム協会および日本サステナブルツーリズムイニシアティブを代表して、田川博己氏より開会挨拶がありました。
田川氏は、サステナブルツーリズムが世界的な潮流となる中で、理念にとどまらず、地域でどのように実践していくかが重要であると述べました。その実践を支える基盤として、自然環境の保全、地域文化の継承、地域住民の参加を重視するエコツーリズムの考え方を紹介しました。
また、観光は「訪れてよし、住んでよし」であるべきであり、来訪者だけでなく、地域に暮らす住民にとっても価値あるものでなければならないと強調しました。
さらに、エコツーリズム推進基本法の変更により、地域DMO等も協議会の事務局を担うことが可能となったことに触れ、多様な主体による地域主導の取り組みが進めやすい環境が整いつつあると述べました。

プレゼンテーション: 観光地域づくりに向けた地域の取り組み事例の発表

📍北海道弟子屈町:自然を守り、活かし、未来へつなぐ
最初の事例発表では、てしかがえこまち推進協議会 エコツーリズム推進部会の藤原仁氏より、北海道弟子屈町における取り組みが紹介されました。
弟子屈町は、町域の約65%が阿寒摩周国立公園に位置する自然豊かな地域です。かつては年間130万人規模の観光客が訪れていましたが、団体旅行から個人旅行への変化などを背景に、観光客数は減少傾向にありました。
こうした危機感から、2008年に官民協働による「てしかがえこまち推進協議会」を設立。「自然を守り、活かし、未来へつなぐ」を理念に掲げ、2016年には北海道で初めて「エコツーリズム推進全体構想」の認定を受けました。これにより、特定自然観光資源の指定や立ち入り規制など、法的な保護と観光活用を両立させる仕組みが整えられました。
特に象徴的な取り組みとして紹介されたのが、アトサヌプリ(硫黄山)トレッキングツアーです。落石事故により入山禁止となっていた硫黄山について、関係機関との協議を重ね、人数やガイド体制を限定した高付加価値なトレッキングツアーとして再生しました。
同ツアーでは、公認ガイド1名につき最大6名までという少人数制を採用し、参加費の一部を自然保護や登山道整備に還元する仕組みも導入しています。自然を単に観光資源として利用するのではなく、保全のための財源を生み出す仕組みとして設計されている点が特徴です。
これらの取り組みは、第18回エコツーリズム大賞の大賞受賞や、グリーン・デスティネーションズ「世界の持続可能な観光地TOP100」への選出にもつながっています。藤原氏は、今後も自然保護と観光活用の両立を図りながら、地域の資源を若い世代へ継承していきたいと語りました。

藤原氏の資料から

📍山形県出羽三山地域:自然と精神文化を活かしたアドベンチャートラベル
続いて、株式会社庄交コーポレーションの後藤洋一氏より、山形県出羽三山地域におけるアドベンチャートラベルの取り組みが紹介されました。
庄交コーポレーションでは、インバウンド誘致に取り組む中で、出羽三山に受け継がれてきた講や修験道の文化、古道、山岳信仰といった「後世に残したいもの」が、アドベンチャートラベルと高い親和性を持つことに着目しました。
現在は、六十里越街道のトレイル、羽黒山での山伏体験、湯殿山周辺での滝行体験など、自然と精神文化を深く体験するコンテンツを展開しています。単なるアクティビティではなく、地域に根付く信仰や歴史、身体性を伴う体験として提供している点が特徴です。
また、欧米からの旅行者は2週間程度の広域周遊を求める傾向があることから、鶴岡市内の地域DMOとの連携に加え、東北・新潟エリアのDMCともネットワークを構築しています。地域単体ではなく、広域で旅のストーリーを組み立てることが、海外市場への対応に不可欠であると述べました。
今後の課題としては、FIT向けのセルフガイドツアーへの対応、スマートフォンアプリの活用、ボランティアツアーによる地域貢献の仕組みづくり、専門性の高いガイド育成などが挙げられました。後藤氏は、手配業務の効率化を進めながら、地域文化を深く理解し、安全に案内できるガイド人材の育成を進めていきたいと語りました。

後藤氏の資料から

📍京都府南丹市美山町:地域の持続性を目的とした観光まちづくり
3つ目の事例発表では、一般社団法人南丹市美山観光まちづくり協会の青田真樹氏より、京都府南丹市美山町の取り組みが紹介されました。
美山町は、森林率が約96%を占める中山間地域であり、人口減少や林業の衰退といった課題に直面してきました。こうした中で始まったのが、地域を維持するための観光まちづくりです。
青田氏は、観光の目的は単に観光客を増やすことではなく、「次の世代に風景をつなぐこと」であると述べました。美山町では、地域に雇用を生み、地域内で経済が循環する「稼ぐまちづくり」を目指し、住民自身がガイドや体験提供者となる仕組みをつくっています。
かやぶきの里のガイドウォークや、しめ縄づくりなどの体験を通じて、地域住民が自らの暮らしや文化の価値を旅行者に伝え、その収益を地域に還元する。このような仕組みによって、観光が地域の誇りや持続性につながっています。
また、美山町は2021年にUN Tourismが実施する「ベスト・ツーリズム・ビレッジ(BTV)」に認定されました。この国際的な評価は、地域住民が長年取り組んできた活動の価値を再認識する機会となり、地域の自信にもつながったといいます。
青田氏は、今後はBTVのネットワークを活かした面的な連携や、人口減少下における環境と経済の維持に取り組んでいく方針を示しました。

青田氏の資料から

パネルディスカッション:地域をどう巻き込み、世界に選ばれる地域をつくるか

後半のパネルディスカッションでは、日本アドベンチャーツーリズム協議会チーフディレクターの山下真輝氏がモデレーターを務め、藤原氏、後藤氏、青田氏とともに議論を深めました。
山下氏は、各地域の実践から学ぶべき論点として、「観光客を受け入れる地域としてどのような観光施策を実施すべきか」「世界に選ばれるデスティネーションを目指すために何をすべきか」という2つの視点を提示しました。
地域の巻き込みと受け入れ態勢について、藤原氏は、弟子屈町では町民が誰でも参加できるエコツーリズム推進部会があり、住民が主体的に観光を基軸とした地域づくりに関われる仕組みが機能していると説明しました。また、事業者同士がネットワークを立ち上げ、ルールを定めながらフィールドを守り、活用している実態を紹介しました。
後藤氏は、出羽三山のような宗教的・精神的な場を観光で扱う際には、関係者との信頼関係の構築が不可欠であると述べました。神社との関係構築やDMOとの連携に加え、体験の質を守るためのルールづくりやコントロールも重要であると指摘しました。真摯に修行をしたい人と、観光目的の人が混在しないようにする工夫など、本物の文化体験を守るための取り組みも紹介されました。
青田氏は、観光を外部の事業者に任せるのではなく、地域住民自身がガイドや体験提供者となることが基本であると強調しました。その上で、DMOは地域と旅行者の間に立ち、地域の暮らしや価値を翻訳・編集する役割を担うべきであると述べました。

左上:モデレーター・山下氏    右上:北海道弟子屈町・藤原氏
左下:山形出羽三山地域・後藤氏  右下:京都府南丹市・青田氏

📍世界に選ばれるデスティネーションに必要なこと
「世界に選ばれるデスティネーション」については、各登壇者から共通して、地域資源そのものの魅力だけでは不十分であり、それを守り、磨き、伝える仕組みが重要であるとの意見が示されました。
青田氏は、BTV認定においては、DMOによるガバナンスや優先順位付け、地域のバリューチェーンを強化する取り組みが評価されたと述べました。地域情報を一元化し、地域全体として観光の価値を共有することが、国際的な評価にもつながったといいます。
後藤氏は、海外誘客においては広域連携が不可欠であり、地域単体ではなく、複数地域をつなぐ旅の設計が求められると指摘しました。また、国際的な安全基準への対応や、広域を案内できる専門性の高いガイドの育成も重要な課題として挙げました。
藤原氏は、地球環境が急速に変化する中で、環境モニタリングや既存ルールの適切な運用が重要であると述べました。自然を守り抜く姿勢そのものが、結果として真の高付加価値を生み、世界から選ばれる地域につながると語りました。

📍ET・AT・STは、地域を起点に統合されて初めて力を発揮する
最後に山下氏は、エコツーリズム、アドベンチャーツーリズム、サステナブルツーリズムは別々の概念ではなく、地域を起点に統合されて初めて力を発揮するものであると総括しました。
世界に選ばれる地域とは、単に魅力的な自然や文化資源を持つ地域ではありません。それらの資源を地域全体で守り、磨き、次の世代へ伝えていく仕組みを持つ地域です。
今回のウェビナーでは、各地域の実践を通じて、ET・AT・STを掛け合わせた観光地域づくりの可能性が示されました。地域資源を消費するのではなく、保全し、価値化し、未来へ継承していく。そのような観光のあり方が、これからの地域づくりにおいてますます重要になることを確認する機会となりました。
日本エコツーリズム協会、日本アドベンチャーツーリズム協議会、日本サステナブルツーリズムイニシアティブの3団体は、今後もそれぞれの専門性を活かしながら、持続可能な観光地域づくりに向けた情報発信と連携の機会を創出していきます。

ウェビナーは引き続き、環境省、文化庁、観光庁および農林水産省より関連する施策の説明へと進みました。
これについては、次回の配信記事で共有したいと思います。

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